3~4mの崖下にその空気の発生元があった。
長田さんとは面識がない。長田さんは知人の後輩ということで、知人からは「すごいやつ」と聞いていたので少し緊張しながら崖を降り入り口を探すが玄関がない!中の人が上からですと案内してくれて再度崖の上に登り手すりのないブリッジからアプローチし屋根を通って中にはいった。
模型を見て、図面を見たら十字形のワンルームのプランを基本にして変形を加えて空間に変化を付けているのか?と思いながら内部を1周・2周とする。「図面には風景と視線を固定せずランダムに繋ぐ」とある。なるほど、どのコーナーからも2つ以上
の風景が見え外からはコンクリートの閉じた塊に見えたが中から外、中と中と外と繋がって開いていた。壁は直角に交わっているところがない。そのことで視線がスットップせずに流れるのかな?そこまで狙って造ってるのかな?と思いながら所在なく天井なんかを眺めていたら一緒にいったjoが設計者に突っ込んだ「なんで壁が曲がっているの?」と。
結果的にはこの質問がこのオープンハウスの場を盛り上げた。
最初は長田さんも視線がどうのこうのとあしらっていたが、角度はいくつもなくて3度ずれているだけと言ったところで「なんで3度?」とみんなが言い出しとうとう種明かしとあいなった。
予算的に70㎡程度になるので10㎡程度のボイドを抜くことを加味して9m×9mの正方形を設定して9つのピースに分割してそれを再度組み替える。組み替える時に各ピースは各部屋として・部屋同士の関係として・外部との関係としてどの組合せ方が一番よいかを何パターンもスタイロ模型でスタディーしている。もちろん9つのピースに分ける分割線の角度も無数にあるからスタディーの数も膨大になる。それを延々繰り返し最適解を導き出したそうである。
すなわち「9m×9mの正方形を9つのピースに1つの角度で分割して一番よい再統合の形は?」という質問を自分にしている。質問が間違っていると永遠に答えは出ない。質問設定が勝負ですねと問いかけると、その質問自体も何通りも設定しなおしているという。
その話のやり取りで感じたのは、めっちゃローテクなスタイロ模型というツールで検討していて一見コンピューティングとは一番遠くに見えるがいわゆる最近話題の「アルゴリズムアーキテクチャー」そのものだというのが解り、そうするとこの小さな家で石川県初のアルゴテクテュアを体感してしまったらしい。
安藤忠雄さんのお弟子さんである長田さんに質問をしてみた。
金沢の60・50代のアトリエ派の人たちはいけばなを腕組みしながら見つめるように建築を造っている、安藤さんはその筆頭で刃物を一心不乱に研ぐように建築を造っているように感じるがそうはならないのかと、少し前世第への皮肉をこめながら聞いた。
答えは期待通り、「あのやり方は確かにすごいがやりたくない。」
長田さんもまた自分の恣意性に頼らず普遍性を求める世代であった。
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