金曜日, 4月 16, 2010

テント!?

町で見かけた神社の参拝路に設けられていたテントの構造について。
写真のテントを見て、
意匠の娘が、「joさん、これって大丈夫なんですか?」と、
私は、「見れば、危ないに決まっているだろ。」と、吐き捨てたくなったが、建築構造職に携わる者として余りにも芸がないので、この場を借りて少しだけ詳しく説明する。

構造を図1に示す。
構造は、テンセグリティーに似ていて、軸材には圧縮力のみ、張材(紐)には引張力のみが作用するという、カタカナを使えば少し格好良く聞こえてくる。
要は、木柱と紐のみで成立していて、支点、節点は全てピンという構造である。
この構造体の問題点は、紐の引張耐力と木柱の座屈耐力に対して、 柱脚支点の水平力に対する許容耐力が小さ過ぎる点である。

この場合の支点の水平耐力は、Ha = μ・N で、
ここで、 μ : 木柱と石床の摩擦係数, N : 軸力(鉛直方向力)である。
支点に作用する水平力 H が許容耐力 Ha を超えれば、柱脚はローラー支点となって、不安定構造物となる。

つまり、崩壊メカニズムが完成するので、倒壊である。

水平力が許容耐力を超えるには、人間が柱の足元を思いっきり蹴って、パンチングシアーに似た外乱を作用させるか、
もしくは、
最も現実的なのは、柱が傾くことである。
柱が傾くと図2のように軸力 N は、水平方向成分と鉛直方向成分に分割される。柱の傾きθが大きい程、水平方向成分は大きくなり、鉛直方向成分は小さくなる。
つまり、作用する水平力 H は大きくなり、許容耐力 Ha は小さくなる。
具体的な外乱としては、テント部に強風を受けて柱が傾いて倒壊という。感覚的にも理解できるストーリーである。

ちょっとした、くだらない構造についても、少しだけ考える癖を付けると、吐き捨てられることはなくなるのでは、、、と。。。

意匠設計者は、面白い建築で構造担当を困らせたがるけれど、構造設計者からすれば、
「こんな、つまらないモノの為に考えられるか。」と、吐き捨てたくなる建築は多々あるはず。

面白い、いい建築には両者にセンスが必要。
どの業種もそうだろうけれど、一生、勉強。
大変。

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