木曜日, 4月 08, 2010

「こと」のデザイン

はじめまして。このブログは金沢の20~40代の男女の建築士5人が自由に金沢や建築や住宅の周辺について話します。共通の指標や目標があるわけではありませんが、なぜか面白い場所になる予感だけは共有しています。
5人目の顔見せとして自分の指標的なことについて書いてみます。

「ことのデザイン」
この言葉に出逢ったのは20代のころ、かばん持ちとして師匠に同行し吉武泰水先生のお話を伺う機会に恵まれた時でした。そこで「ことをデザインする」という当時は聞きなれない言い回しに戸惑い、心の中でつぶやきました。

デザインするとは「もののかたち」のことやろ?

今でこそシステムデザイン・環境デザイン・生活デザインなどいろんなものに「デザイン」がつくようになりました。しかし当時はそれほど一般的な言葉づかいではなかったような気がします。

実務に戻りひたすら終わりの見えないスケッチを繰り返し、資料をむさぼる事を繰り返しています。悩んでいるのは形ではありません、周辺との関係、人の動き、家族の構成、彼らのスタイル・趣味嗜好、未来での変化、古さへの畏敬、外と内の関係、自然との関わり、風景の事、合理性、予算、安全そしてプロポーション等々…。
無間地獄のように繰り返される想定問答、それらすべてがしっくりいっていると感じた時に一旦問答は中断されます。 ………ここが「できた」瞬間です。
驚くべきは「もの」を形づくるための作業の大半は「こと」の創造に費やしていたのでした。

「ことのデザイン」という言葉は設計者の思考過程を端的に言い当てていることに気づいたとき、デザインという言葉の印象が軽薄さから重要な言葉に変化してしまいました。「ことをデザインする」からこそデザイナーではなくアーキテクトなのだろうと。

少なからず専門家への誤解があります。建築家に頼むと自分のデザインを実現するがために変わった形になる、メーカーや工務店なら機能的でしっかりした家になるなどと。

いずれも全てを否定はできませんが機能的であれ、奇抜であれいずれも「もの」の域を出た評価ではありません。

良質な建築家はこのことを体得している。            …と、信じています。

長文を最後まで読んでいただき感謝いたします。今後ともよろしくお願いいたします。
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