木曜日, 7月 29, 2010

輪島の土蔵修復活動 <夏のワークショップ2010>

とにかく暑くてしんどかったが収穫も多い体験をさせてもらった。

NPO法人輪島土蔵文化研究会は能登地震で被災した伝統在来工法の木造の建物が地震をきっかけに外来の工法による建物に置き換わり町並みが崩壊したり、伝統工法の衰退を危惧しボランティアによる土蔵修復事業を行っている。今までに6棟を修復している。

大野くらくらアートプロジェクトで一緒に笑ったり怒ったりしていた土蔵研究会の水野さんからは再三ご案内をいただいていたが今回初めて参加した。

それこそ様々な種類の建築が立上がる行為に立ち会ったが「土蔵」を作る現場は初めて。そんな体験はめったにない。

とはいえ、大野の時も現場のワークショップというと「しんどい」という記憶がよみがえる。

期待と不安が入り混じり、それでも車で同行した仲間には「やっぱこんなんワクワクするわ!」と言いながら 早朝の金沢出発。

2時間ほどで輪島の鳳至町の現場に付いた。ざっくり言うと七尾邸というお宅の傾いた土蔵をレストランに 再生するプロジェクト。



                                 現場全景


竹小舞が組まれた内部 左は懐かしい箱階段  
       
総勢20人のボランティア・大学生・職人・建築家・料理人・先生など…。

軸組みの傾きや補強が終わり、小舞かき・手打・大直し・縦縄入れまで終わった状態。今回はこの上に樽巻き横縄入れという作業をする。

設計は東京から輪島に移り住んだ建築家・萩野さんと大学生グループとのこと。

この「樽巻き」という工程は北陸3県の土蔵にはほとんどないらしいが他の地域ではみんなやっているらしい「なんで?」と左官の竹本親方に聞くと、「たぶん災害 のない地域だったのでだんだん省略されていったの ではないか」とのこと。今回はしっかり樽巻きをすることで強い土蔵に再生するらしい。

私に与えられた仕事はベテランボランティアの大学生の手元として土を練る事と運ぶこと。
土は2種類作る。

現代工法でいう「シーラー」にあたる「スナズリ」と荒壁になる「アラツチ」

それぞれ砂・土・スサ・水を混ぜて作るのですが分量と土のキメ・スサの粗さが違います。
それぞれの材料を福井大生の指示に従いミキサーへ運ぶのが炎天下では重労働でかなりへばりました。


砂と土結構重い





スサも混ぜる


その三つと水をミキサーへ


これがアラツチ

こちらスナズリ。アラツチよりきめが細かい


もう一つの班は親方竹本さんを中心にその土を実際に壁に塗り縄を巻く作業。 これもバケツリレーで3層目の足場まで土をあげるのに大変そう。




以前に塗ってた壁にシーラーとしてスナズリを塗る


 これが樽巻き





縄は竹釘で留める


さて、なんで夏休みにみんなこんなしんどい事をボランティアでやっているのか?

私は、先のとおり「土蔵」の「土壁」の現場を知りたい。

東京から一泊二日で来ている早稲田の学生はタッパに「アラツチ」と「スナズリ」を入れて研究室もって帰る。

みんな廃れ行く伝統技術に触れたい、できれば残したい。そんなゆるい共通心があるような気がします。

その最も危機感ある人種は、張本人の左官職人。休みに手弁当で各地から駆けつけている。
左官職人と名乗っていても本物の土壁を仕事で塗ったことなどない、こんな経験は他ではできない。…からやっている。

富山の左官屋さん曰く、「なんぼ知識で知っていても現場でやらにゃ話にならん」。
一同同意、だから集まってくるのでしょうね。

久住章さんという日本の左官業界のカリスマ・兵庫県出身。海外にまで左官の指導に行っているほど有名人。私も本やテレビで見たことがあります。

輪島土蔵文化研究会がこのような活動をするにあたって、阪神淡路大震災で日本中から支援をもらった関西人として恩返しの意味もあり当初輪島に乗り込んで竹本親方や地元の職人さんに直接指導したそうです。
その一流の技術に触れたくて職人さんが集まるそうです。彼らが久住さんを語る語り口が(ただ働きなのに)本当に幸せそうです。

それを見ていると会社や所属が違っても業界内の正しい目標となるトップランナーという存在はどの業界でも必要なのだと感じました。

早稲田大学と福井大学の学生さんも多かったです。そしてよく動きます、なおかつ周りを見渡しています。前回や次回以降立命館や立教などの学生さんも大勢ボランティアに参加するそうです。なんだか地元石川県内の学生さんがいないのはどうした事でしょう。

●壁は7~8層に渡って塗りこめられていきます。厚みは24cmにも及びます。夜はその工事中の現場の2階で寝ましたが真夏なのに随分涼しく快適に眠れ、土壁の室内環境調整能力を体感できました。

●壊れた蔵の土を新しい蔵の壁に再生でき、スサは古畳のタタミドコを利用出来る事は「自立循環型」のエコロジー工法ということもわかりました。

●堅苦しい文化財的な手法ではなく、このような再生方法で伝統技術を継承することの可能性も見えました。またそのことに賛同する人が全国にたくさんいることもわかりました。

●同時に、たぶんこの手の工事を利益ベースで考えると材料代より人件費が大幅にかかり人件費の高い日本で根付かせるのは容易なる事ではないという事も感じられました。


●なにより匂いのきつい醜い土が左官職人の手にかかると立派な「建築」になる事に驚嘆しました。



建築になった土

作業より休憩のほうが長い私をフォローしてくれた大学生のみなさんありがとうございました。

 

左官屋さん土で作ったピザ釜が庭にある(シェル構造の見本?)


その釜で焼いたホイル焼きや海の幸で晩御飯、うまかった


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2 件のコメント:

  1. 当方建築をかじっておりますが(人から聞かれて)、一から土蔵を作るには、いくら位の費用がかかるものかとの質問に答えられませんでした。
    ㎡当りの金額など、皆目見当がつきません。ご教示いただけますでしょうか。

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  2. 鬼瓦の上のおおきなまつげのような鉄製の突き出し。なんというものなのか、なんのためのものなのか教えてください。

    返信削除

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